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実乃梨「バレンタインか…」

このエントリーをはてなブックマークに追加 コメント (0) | カテゴリ: とらドラSS | 更新日: 2010/11/30 09:00
実乃梨「バレンタインか…」


74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/15(月) 23:58:45.92 ID:oeMttaluO

特に何も考えずにいつもの様にいつもの時間に目覚め
自分と大河の分の弁当を手早く作る
そのままインコちゃんの餌と水を変えてやり、実母、泰子の分の食事にラップをかけてそのままレンジに入れておく

シワ、ほつれなど一切ない綺麗な学生服に身を包み
顔をあらい、歯を磨き
簡単に寝癖もなおし、古めのドアを開け外に出る

「そういや、大河のやつ昨日遅くまで電気が点いてたけど…どうせまだ寝てんだろーな」

チーン、とエレベーターの扉が開き
高そうな赤い絨毯の廊下を竜児はそんな事を呟きながら歩いていた


75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:11:04.73 ID:bOo12YhZO

「大河ーまだ寝てん…てなんだこの匂いはッ!」

モワアッと、オートロック式の重い扉を開けた瞬間甘ったるい匂いが竜児の鼻孔を刺激する

「こりゃ…チョコか?」

余りにも濃いその香りはそう判断させるのにかなりの時間をかけさせた
竜児はとにかく匂いの原因を確かめようとキッチンのある部屋の扉を開ける
思わず、絶句
言葉を失った

「…」

なんだコレは?一体どうしてこうなった?
キッチンの作業台、床、後の戸棚にまでチョコと思しき物体がまるで殺人現場の様に飛び散っている
シンクには積み重なったボウル(勿論洗っておりません)がいまにも崩れそうだ
何というか…とりあえず

「大河あああ!」

言葉を取り戻した竜児はとりあえずそう叫ぶ事にした


77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:19:37.58 ID:bOo12YhZO

寝室の扉をまるで蹴破るように開け放ち
天涯つきのベッドですやすやと眠るお人形のような少女にむけて
その悍ましいばかりの眼球をギラつかせる

「大河!おい起きろ!ありゃ一体何だ!?どーなってんだ!」

「…むにゅ…ん…」

「起きろぉおおお!」

ガバアッと、強引に彼女が包まっている毛布を剥ぎ取る
本当巻き付ける様に包まっているいたので大河はそのままグルグルと回転
そしてベッドの下へ落下し鈍い音と、ぎにゃ!と言うくぐもった声が同時に響いた


78:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:24:26.64 ID:bOo12YhZO

ベッド向こう側から頭をバリボリと掻きむしりながらのそのそと
おまけにでかい欠伸をかましながら起き上がる大河

「…ん、竜児…おはよーさん」

「おう、おはよう…じゃねぇよ!なんだよあの惨劇は!」

「ふわ…あふ、朝からきゃんきゃんうるさい犬だこと…惨劇って?ああキッチンの事か」

キッチンの事を知っているらしい大河はこんどはお腹を掻きながらもひとつ欠伸をぶちかます


80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:33:19.31 ID:bOo12YhZO

とりあえずキッチンがあの状態では大河の朝ご飯が作れないので大河の身支度を玄関で待ち
もう一度高須家でご飯を作る事になった

「はあ?決まってるでしょ?…あ、そうかアンタにとってはいつもの平日と変わんないもんね?そりゃ悪い事言っちゃったわ」

全然悪びれる様子もなくずずずっと味噌汁を飲む大河

「喧嘩売ってんだろ、そうなんだな?」

こめかみに筋を浮かべピクピク動かしながら竜児はおかわり!と差し出されたお椀を受け取る

知らないわけがないだろう?
まあ確かに、いつもの平日となんら変わりがない事は認めるが
それでも今年は、今年こそは!何かがあるかもしれないと
毎年毎年、思っているいたいけな少年の心を
大河は土足どころか新品のスパイクで踏み荒らして行きやがった


81:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:41:40.20 ID:bOo12YhZO

そんな傷心の男の事などまるで気にする様子もなく
大河は、山盛りになって戻ってきたお茶碗を受け取りながら

「でもま、さすがのアンタでも0コって事はないわよ」

「何でだよ?そんな保証はどこにもねぇだろ」

「アンタ…普段私をどんな目で見てんの、よ!」

と、大河が何かかくばった物を投げ付けて来た
バシッと額に当たり竜児の組んだ足元に落ちたそれは
文鎮、というような事はなく
綺麗に包装された箱
まあ、チョコだった


83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 00:53:47.26 ID:bOo12YhZO

「い、一応アンタには世話になってる事だし…何よその目は!おどろおどろしい!」

物投げ付けて攻撃された事に怒り狂い目の前の大河をどんなルートで売りさばいてやろうか、などと考えているのではなく
単純にそれは笑顔だった

彼が今まで貰った事があるのは
中学の時、なんの面識もない後輩の女子から(たまたま体育館裏を通り掛かった竜児に驚き慌てて逃げ出した際、落としていってしまった物を竜児が持ち帰った)貰ったことを除けば
母親の泰子、そしてその同僚からだけだった

だから竜児は

「…なんだろ、あれ?おかしいな」

「ひいぃっ!ちょっと!何泣いてんのよ!気味が悪いわ!」

不覚にも心で汗をかいた


85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:07:47.96 ID:bOo12YhZO

なんとなく
本当になんとなく置いていくのもなんだったので
そう!泰子に食べられちゃうといけないからな!
と、心の中で言い訳をする竜児の肩にある鞄の中には
先程、大河から貰ったチョコが入っている
大河はそんな事には気付かずに
まだまだ厳しい寒さが残るいつもの通学路
竜児の隣で奪ったカシミアのマフラーに鼻まで顔を埋めてよたよたと歩いている

浮かれ気分で歩いている隣の般若、いや高須竜児をちらとみやり口を開いた

「なにへらへらしてんのよ馬鹿犬が…アンタもしかしてみのりんにも貰えるなんて甘い事を考えてるんじゃないでしょうね…」

「な、何言ってんだよそんなこと…ねぇさ」

とは言ったものの、やはりもしかしたらという気持ちは拭えない
夏には泊まり掛けの旅行
喧嘩もしたけど文化祭では一生記憶に残るであろう福男レースも一緒にゴールした
クリスマスからは色々、本当に色々とあった
そして今にいたる、一度はフラれたりもしたけど完全に終わったわけじゃない

そんなことがあったからこそ竜児はもしかしたらと…そんなことを考えていた


86:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:16:44.91 ID:bOo12YhZO

寒さのせいか口数も少なく歩いていると
いつもの交差点、櫛枝実乃梨との待ち合わせ場所が近付いてきた

「じゃあ、先に行ってるから!アンタはここで3分ステイ!わかった?」

「わかったわかった」

大河にも色々あって一度は自分と離れ、一人でやっていく
と、意気込んで何週間か高須家にも来なかった時期があった
それでまあ予想通りと言えば様子通り
一月ももたずに箸と茶碗を持って高須家のベランダに飛び込んで来た

一人立ちすると言った理由も戻ってきた理由も結局は聞けずじまいになってしまったが


87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:23:18.36 ID:bOo12YhZO

「ん、そろそろ3分たったよな」

携帯を開き確認してみるが3分待てと言われた時刻がわからないので
結局はアバウトなわけだが大丈夫だろうと歩みを進める

待ち合わせの交差点、誰もいない筈の待ち合わせ場所

通学路なのだから学校へ向かう生徒がちらほら居ないこともないけれど
そこにはいないはずの人間がいることに竜児は驚いた
そんな理由がなくたってその人間を見つけたときは少なからず驚くことにはなるのだけれど


89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:36:38.97 ID:bOo12YhZO

「おっはよー!うぅ~いやいや今日もしばれますなー」

っかー!さっびーなおい!と実乃梨はポケットに手を突っ込んだまま詰まり気味らしい鼻をすする
スカートの下とジャケットの下に体育着のジャージをフル装備
やはりもっこもこになっている

「あれ…櫛枝、大河は?」

「大河は先に行っちまったよー!私は一緒に待ってよーぜっていったんだけどさー薄情な奴だぜぃっきしっ!あーチキショー」

親父みたいなくしゃみを放ちつつ
さあゆこう!高須くん!と先に進む

よくわからないが、大河が気をつかってくれたんだろうか
隣の実乃梨をちらと見ながらそんなことを思った


90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:44:50.34 ID:bOo12YhZO

やはり二人になるとどうしても緊張してしまうのは何故だろうか
ずんずん進んで行く実乃梨は竜児を置いていっては振り向いて立ち止まり
追い付くまで待ってまたずんずん竜児を置いて進んでいく
なんだか落ち着きがないのは気のせいだろうか
いや、いつも通りだろうか
未だに実乃梨の全貌が掴めない竜児だったが
彼女の全貌を掴んでいる人間などこの世にはおそらくいないだろう

「どうあー!っいってーなもう!」

凍った水溜まりの上で足を滑らせ豪快に転ぶ実乃梨を見て竜児はそう心から思う


92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 01:55:15.07 ID:bOo12YhZO

「ははー、恥ずかしいとこみられちったぜ失敗失敗…スネーク!その辺りには気をつけたまえ」

「おう。…おぉおっ!」

「ん?どーしたね高須くん」

恐らくはさっき転んで尻餅を着いたせいだろう
実乃梨の肩からかけたスポーツバックに引っ掛かり、スカートが思いっきりめくれ
さらに下にはいている赤いジャージの尻部分!穴が!ANAが!開いておる!
つまりはそのさらに下の部分が穴から丸見えとは行かないまでも
白い布部分と白い肌が覗いてしまっている

「櫛枝!とんでもねぇ事になってんぞ!」

慌てて竜児は実乃梨のバックを持ち上げてとりあえずスカートを下ろしてやる

実乃梨は、え?何が?とまったく下半身の一大事にまるで気付いていなかった


93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 02:01:01.18 ID:bOo12YhZO

一人パニックに陥っていた竜児は
とりあえずスカートがめくれていたことだけを伝えた

「あらあらまあ、失敬失敬お見苦しいモン見せちまったかな?」

まあ、ジャージはいてるし無問題だー!と暢気にもVサイン
気付け!頼むから気付いてくれ櫛枝!と
竜児の心の叫びも届かないまま
いつのまにか学校についてしまった


96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 02:09:52.84 ID:bOo12YhZO

教室に着いて竜児は異変に気付いた
いつも平和教室の空気が一変
ピリピリと、殺伐とした雰囲気が竜児の体を突いている様だ
見た目はいつもと同じ光景なはずなのに
なんだこの違和感は…ハッと、

先程の実乃梨の件ですっかり頭からぶっ飛んでいたが今日はいつも通りなんかじゃない!
バレンタインじゃねぇか!
と竜児は遅まきながら思い出す


98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 02:20:08.19 ID:bOo12YhZO

「みのりーんぬ!!」

すぐ隣にいた実乃梨に目にも泊まらぬスピードで飛び掛かったのは
一足先に学校に着いていた大河だった

「おーう大河!何分振りだー?」

うーはははは、と飛び付いた大河を受け止めそのまま回転し始める実乃梨
ジャージの穴を知っている竜児はもちろん気が気でないが
そんな心配をよそにブン回す実乃梨とブン回される大河
そんな大河の足がガツンと鈍い音を立てる

「あ、亜美ちゃん!?大丈夫?」

続いて来た麻耶と菜々子が白目を向いている亜美を抱き抱えて起こしてやる

「はっ…今亜美ちゃん一瞬お花畑が見えちゃってた…ってゴルアてめーあやまりやがれぇ」

黄泉の国から帰ってきた亜美はそそくさと席に戻る大河の背中に向かって吠えた


99:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 02:28:41.54 ID:bOo12YhZO

「ご、ごめんよあーみん」

「フン、ばかちーがノックもせずに教室に入るからでしょ?」

「なんで教室入るのにノックが必要!?ざけんじゃねーよばーかばーか!」

ざわ…ざわ…

亜美の登校に気付いた男連中が急にどよめく

「亜美ちゃんなら…きっと」

「ほらなんかデカイ紙袋持ってるよ!持っちゃってるよ」

「いやまだ断言するには早い…しかし亜美ちゃんなら!」

「あああもう俺はだれでも構わない!誰かっ!神様!」

色々な声が飛び交う中
ニヤリと亜美の顔が不敵に歪む


140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:08:37.47 ID:bOo12YhZO

ニヤリ、ニヤァリ、そしてニヘラ~と気持ち良さそうに笑う亜美

…ククク跪ずくのだ愚民ども!今世紀最後の女神様の聖誕に平伏すがいい!
さあ!そして舐めろ!この女神の影を犬のように平伏したまま舐めるがいいわ!貴様らには最高のグルメだろ?はっはっはー
この私が愚民にチョコだあ?夢に見ることですらおこがましい行為だという事に気付かないとは
やはり愚民はどこまでいっても愚民なんだオイ!100億年はえぇんだよ!ーーー

「や、やだあそんなんじゃないってばあ」

頬を赤く染めつつ潤みっぱなしのチワワの目で俯き気味に呟く亜美は
手に持っている紙袋をこれみよがしに抱き抱える


141:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:17:01.75 ID:bOo12YhZO

「ぴろぴろーぴろぴろー…むむっ!あーみん、その紙袋っ…この櫛枝のレーダーはごまかせられぬぞ!」

いつの間に結ったのか、頭のてっぺんに噴水が上がっている実乃梨は亜美の紙袋をジト目で睨みつける

「う…ホントになんでもないってば!」

「またまた~チョコだろ?CHOKOなんだろ~?」

と、珍しく食いつく実乃梨
普段あんましない組み合わせに実乃梨のチョコのスペルの間違いに気付くことなく竜児は興味をしめす


142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 22:27:46.96 ID:bOo12YhZO

「だーもう!チョコよ!なに、なんか文句あるわけ!?」

すでにキスの距離まで接近した実乃梨のどアップに根負けした亜美はキレ気味に白状する

おおお!と騒ぎ出す野郎供を尻目に実乃梨はさらに尋問を続ける

「ふんふん……で、誰にあげるのだね?」

「えっ!?そ、それは」

思わず取り乱した亜美はハッと一瞬だけ、竜児の事を見て
やばっ!と、すぐに視線を目の前の実乃梨に戻す

その一瞬の隙を実乃梨は見逃すわけもなく
亜美の視線を追ってその先の人物を確認する

そして近くの亜美にも、誰にも聞こえない小さな声でつぶやいた

「!………思わぬライバル出現か…」


147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:00:55.69 ID:bOo12YhZO

 独っ!
と突如、勢いよく教室の前の扉が開く
余りの轟音に、あの大河や実乃梨まどもが肩をビクッと震わせた程だ


「ククク…いいわよねぇ、朝から受かれちゃったりしちゃったりしてさー…クク、クククク」

「ど、どうしたんですか先生!」

委員長北村が思わず声をかけるが

「るっせぇ!とっちゃん坊やはスッこんでな!!」

「ヒッ」

ドドドド独独ドドド独独独ッ
と、独身(30)の背中からとんでもなく黒い負のオーラが吹き出している

「HRだ…席につけ」

ガタタッ!と恐怖の余りか統率された一糸乱れぬ動きで全員が席に着く

「あわわ…どわ!」

ただ一人鈍臭く、春田が腰を抜かしてしまってへたり混んでいるのを隣の女子が引っ張りあげる


149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:06:31.21 ID:bOo12YhZO

「き、起り…ヒッ!」

ただ委員長としての義務で号令をかけようとした北村はまたも
独身(30)の一睨みで上げかけた腰をふらふらと戻す

シン…と静まりかえった教室で
教壇に両手をついた独身(30)は(なお、オーラは今も絶賛噴き出し中)

「クク、ククク…く、くっ…おーいおいおいおい」

いきなり男泣き、いや独身泣きで崩れ落ちた


150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:11:23.69 ID:bOo12YhZO

「どうせ、どうせ私なんか…私なんかあああ」

「お、落ち着いて下さい先生!おい誰か!手を貸してくれ!」


・・・


「えー恋ヶ窪先生は体調が優れないとの事で早退されました、ですので一限目は自習となります」

じゃあとは頼んだよ、と投げやりにも北村に全てを託し福担任らしき(初対面)男はツカツカと教室を出ていった


151:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:19:40.21 ID:bOo12YhZO

「やっほーう!自習だぜーっ」

「うわ超ラッキーじゃん?」

「てゆーかゆりちゃん去年も…」

「さーって何して遊ぶ?」

教師という名の箍が外れた2-C生徒達は各々好き勝手に動き回りはしゃぎだす

「…自習ね」

竜児も内心ではラッキーだとは思っているが根が真面目だからか机の上に予習の準備を始める

「おいおい何だ高須、本当に自習するのか?」

つい先程までは小動物のように震えていた北村が隣の席でそう声をかけてきた

「おう、まあ一応…ん?」

北村の視線が自分の後ろ斜め下の辺りに送られている事に気付いた竜児は振り返る


152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:27:48.51 ID:bOo12YhZO

「…大河、なにやってんだお前」

「別に、ただの早弁よは・や・べ・ん!」

ガサゴソと竜児の鞄を無断で漁る大河がそこにいた
…ってか!その鞄にゃお前からの!

慌てて阻止しようと伸ばした右腕を横から伸びて来た何かにガシッと掴まれる
大河は竜児の鞄を漁っているので大河ではない

では誰だ?と、そのおもちゃのアーム(何でこんなモンが学校に?)を辿ってみると

「駄目だぜ高須くん!大河の食事を邪魔したら…命がいくつあっても足りんぞよ」

実乃梨がおもちゃのアーム(グリップを握るとアームの先端も閉じる奴)をわきわきとさせながら立っていた


154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:38:28.06 ID:bOo12YhZO

「く、櫛枝…いやいや何だそれは?」

「これかい?さすが高須くんお目が高いねー。こんなこともあろうかと後ろのロッカーに突っ込んで置いた!…のを今さっき思い出したのだよ!」

「いや、意味がよくわからねーけど…」

「ちょっと竜児!弁当!どこに隠したのよ!」

そーだ!やばって櫛枝もいんのにあんなのが見つかったら

遅かったか…

カシャンと、アームを取り落とす実乃梨

「わ、わーお…高須くんそれって、もしかして」

「ち、違うんだ櫛枝!」

「ち、違うのみのりん!これは私が!どうせ竜児は一つも貰えないだろうしあまりにも不敏だったから!義理!超義理なの!」


156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:49:13.51 ID:bOo12YhZO

「え、そーなの?」

「そうなの!大体こんな馬鹿犬が誰かから貰えるわけがないじゃん」

「なーんだ!大河からか!はっはっは!はやとちりはやとちり」

一体何をどうはやとちりしたのか問いただしたいのをグッと堪えて竜児は

「そ、そうだ俺みたいなのが大河以外から貰えるなんてそんなこと…んがっ」

いきなり横から何かが飛んできて竜児のこめかみ辺りに直撃する

「って…何すんだ川嶋痛えじゃねーか!」

「ふん、ちゃんと声かけました、聞いてない高須くんが悪いんでしょ」

亜美が投げ付けたそれは
レンガでも灰皿でもなくやはりというかなんというか
チョコだった

なんだ?最近でははチョコは投げ付けて渡すようになったのか?
そんな馬鹿な事を考えてしまうほどバレンタインに縁のなかった男の
二つ目の戦利品がそこにはあった


157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/16(火) 23:57:04.98 ID:bOo12YhZO

ポカンと口を開けたまま少し顔の赤い実乃梨は亜美と竜児とその手元のチョコの箱を順番に見ながら

「あーみん、これって…告、んんっ…わお、大胆だね」

「はあ?何いってんの実乃梨ちゃん!こんなの義理よ義理!」

「いや、義理でも嬉しいぞ…サンキューな川嶋」

「ん…別に」

微妙にバツのわるそうな顔をする亜美の背後では春田が「あ、亜美ちゃん…俺には?」などと泣き崩れている


159:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:05:19.09 ID:MW9QgjQOO

・・・

何となくそこまで催したわけでもないのだが
せっかくの自習だし、教室も騒がしくて落ち着けない
そういうわけで竜児はトイレの手洗い場にいた

「大河と川嶋から…」

鏡の中の自分にメンチを切られたのでブチ切れている訳ではなく、ただぼーっと他の事を考えている

まあ、高望みなのはわかってるけどな…
やっぱり櫛枝も誰かにあげたりとか…するんだろうか
でも、あんまりそういう事に興味なさそうだし…
そういえば大河なら知ってるのかも知れない
今まで櫛枝が誰かにチョコをやった、なんてことあんまし聞きたい話ではないけれど


161:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:16:00.90 ID:MW9QgjQOO

「なーに生意気に黄昏れてんだ、しょぼくれ犬」

「大河!おいここ男子トイレ痛だだだ」

耳を引っ張るんじゃねえ!と
あくまで授業中なので小心者の竜児は小声で怒鳴りつける

そんな心配もよそに大河は普段通りのボリュームで罵声を浴びせる

「フン!ばかちーからチョコ貰えたからって調子こいちゃってまあ…これだからアンタはいつまでたっても駄犬なのよ。みのりんがせっかく頑張ってんのにあんなに鼻の下伸ばしちゃってさ」

「調子なんかこいてねえし、それに櫛枝は関係…ん?何を頑張ってるんだ?」

「私の口からは言えない、さっさと教室に…いいや、ここでちょっと待って!動くんじゃないよたまにはハチ公を見習いなさい!」

たたたっと、かけていく大河
一体何をしにきたんだろうか


162:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:26:07.66 ID:MW9QgjQOO

何となくトイレの入口に突っ立ってるのもアレなので
竜児はトイレのすぐ横、自販機と自販機の間、亜美の定位置にしゃがみ混む
近くの教室から教師の声がぼんやりと響く
することもないのでその音に耳を傾けていると
足音が聞こえた

「大河?一体待ってろってどういう…おう。」

「や、奇遇ですなー」

そのまま竜児の向かいの床に体育座り
ジャケットの下のジャージ(上)はさすがにもう脱いでいたが
スカートの下にはジャージをまだはいていた
だからこそ竜児の目の前で体育座りをしても気にしていないのだろうが

実乃梨のジャージの尻には大きな穴が開いていることに気付いている様子はなかった


164:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:36:35.50 ID:MW9QgjQOO

やはりとんでもない状態になっている
その事実を今すぐにでも伝えてやろうと口を開いた竜児だったが
なまじ今まで言い出せなかったため、気付いていないフリをした方がいい事にギリギリで気付いた

「ん、どうしたの?高須くん」

「いや、…なんでもねえ」

目のやり場に困りすぎる

「?」

「ん、あれ櫛枝…ジュース買わねぇのか?」

「んージャンケンで負けて大河のパシリ…だったんだけ、ど……あ!そうゆー…」

大河の奴大河の奴…と、何かに気付き、ぶつぶつ言い出した実乃梨


「く、櫛枝?」

「いやいやいやいや!何でもござらん!」


165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:46:19.58 ID:MW9QgjQOO

そう言って膝を抱えるようにした腕に鼻まで顔をうずめる
その手にはまだあのアームが握られている

「…」

「…」

なんだこの沈黙は…
普段ならこっちが黙っていても勝手に喋って勝手に笑ってくれる実乃梨が今は何か大人しい、いやかわいいんだけれども
二人きりの状況、少し惜しいがなんとなく気まずくて立ち上がって教室に戻ろうとする竜児は
ガシャコ!と、伸ばされたアームによって進路を妨害される

「お、おう!?」

「い、やーこれ便利だねー座ったままジュースが買えちゃうんだぜー?」

実乃梨のアームは震えながらも器用にチャリンと500円玉を投入する


166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:53:35.19 ID:MW9QgjQOO

「こんなこともあろうかと持ってきておいたのさー」

「そ、そうかそりゃよかったな…じゃ」

引っ込んだアーム、その隙に教室へ

ガシャコ!と、またもやアームが行く手を阻んだ

「えーと大河が好きなのは~♪…これかあ?とりゃ!」

ガチャッとでてきたのは真冬なのにつめた~いお茶だった
ちなみに大河は自販機でお茶などは絶対に買わない

アームじゃ取れないだろうから
取り出し口のミニサイズペットボトルのお茶をとってやり実乃梨にパスする

「お、サンキュー!」

「おう。じゃ…」

ガシャコ!と
三度アームが竜児の道を阻害する


167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 00:57:32.67 ID:MW9QgjQOO

「お釣りお釣り~っと」

「…」

・・・

「ぷはーっ!つめってーなオイ!」

「腹冷えちまうぞ」

てか飲むんだな、それ

心の中で突っ込みを入れる竜児の学ランの裾を
実乃梨のアームはしっかりと摘んでいる


215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 22:28:57.38 ID:MW9QgjQOO

「わかったからもう離してくれよ櫛枝」

「NON!そんなこと言われて素直に応じる櫛枝ではないのだよ」

「…そっか」

「む…そんなにオイラと二人きりなのが嫌なのかい?」

「そんなわけねぇだろ!あ…いや、嫌じゃ…ねぇよ」

「…」

ふふーん、と楽しげな含み笑いをしながら太陽みたいな満面の笑みを竜児に向ける


217:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 22:37:06.12 ID:MW9QgjQOO

しかし、まだアームの先端は竜児を捕らえたままだ

「…櫛枝?」

「だって…不安なんだ、私だって」

「…」

実乃梨の表情が曇る
顔は笑顔のままなのに、瞳の奥深くは冷たく、冷え切っていて、悲しそうだった


219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 22:47:19.57 ID:MW9QgjQOO

「ごめん高須くん、ちょっと真面目モードな…笑わないでおくれ」

「笑うもんか」

これだけは、はっきり断言できる

「クリスマスの…ことだけどさ、あ…イブだ」

「!…おう。」

「ごめん!」

「…おう。それならもう」

いいんだ、わかってる。わかったから…謝らないで欲しい。

「ち、違うの!違うんだ高須くん…そのごめんじゃなくて、その…」

あの櫛枝がこんなに言葉に詰まるのを見たのは初めてだった
そしてそれだけ、次に来る言葉に予想がつかない


220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 22:53:01.32 ID:MW9QgjQOO

実乃梨は「すぅ」と短く息を吸い込み
一息にこう言った

「あの時、高須くんが私を待ってた理由。私に言おうとしてた言葉を聞きたいんだ」

ちゃんと。
実乃梨の目は真っ直ぐに竜児を見据えていた

今度は聞くから。ちゃんと最後まで聞くから。と
竜児が拒絶されたあの日
伝える事も出来ずに泣いたあの夜の情景が
鮮明に竜児の頭の中を走馬灯のように駆け巡る


221:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:00:33.71 ID:MW9QgjQOO

ゆっくりと、しかし確実に
竜児の鼓動が大きく、早くなっていく
あの日、竜児が待っていた、走って、もがいて
それでも訪れることのなかった瞬間が
唐突に現れた

「…俺の、言葉…」

「そう、あの日私は聞かない事を選んだ。逃げる事を選んだ。本当にごめん」

「い、いや…」

「そうすることが…私にとっても高須くんや大河…ううん、これも言い訳だよな、違う…私にとって1番の方法だって、そう思った」

私はただ、傲慢で…ずるいんだよ
いつかの実乃梨の言葉が蘇る


222:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:14:21.53 ID:MW9QgjQOO

「幽霊なんて見えなくていい、私には見えない方がいいって本気で思ったの」

「櫛枝…」

実乃梨の目にうっすらと涙が浮かぶ

「でもね、高須くん…でもやっぱり駄目だった…私、嘘はつけねー」

「…」

「だんだんと高須くんとの距離が遠くなっていくんだよ、いつも通りに、変わらない様に話す度に、どんどん離れていく様な気がするんだ…」

「不安で、本当に不安で寂しくてさ。気付いちゃったんだよね」

「…何に?」

ぐしぐしとジャケットの袖で涙を拭った実乃梨は
また笑う

「へへ、これ前にも言ったっけな?私は傲慢でずるいんだよ?…お願い高須くん先に聞かせて欲しい」

なるほど、傲慢でずるい…ね
確かにそうだ。俺があの夜、そしてこれからいう事なんてわかり切っているくせに
でももうそんな事は、どうでもいい
伝える。
ずっと出来なくて閉じ込めたこの気持ちを。櫛枝に。


224:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:22:47.01 ID:EoHIIWOW0

みのりんかわいいよー


225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:23:21.82 ID:MW9QgjQOO

「く、櫛枝…櫛枝実乃梨さん」

「ん…はい」

学ランの胸ポケットにそれはいつも入れていた
修学旅行の前日、一度は実乃梨の手に渡った物
そして当日、大河が命懸けで竜児のもとへ届けてくれた物を
もう一度。

「高須くん…」

あの夜に渡すはずだったそのオレンジに輝く物を
今度こそ、自分の手で

「好きだ!ずっと…ずっと前から!」

届けるんだ!


226:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:38:59.78 ID:MW9QgjQOO

実乃梨は何も答えずに竜児からヘアピンを受け取る
そしてそのまま前髪に留め、一呼吸

「へへへ…似合うかな?」

「おう」

太陽みたいな実乃梨にきっと似合うと、一生懸命に選んだそれは
修学旅行の時とは違う輝きを放っていた

「っとと、そーだった」

「?」

ジャッジャジャーン!とジャケットのポケットから取り出した物を高く掲げる実乃梨

「ハッピーバレンタイン高須くん!」

かなり近い距離まで近付いてそれを竜児に手渡した。口に手を添えてまるで内緒話、実際内緒話なのだけれど

「…小さいけど、手作りなんだぜ~」

一歩遠のいて実乃梨はコホン、と軽く咳ばらい
そして最後に小さく

「しかも本命だ有り難く受けとりたまへ」

言い切る前、最後の方
実乃梨の顔は太陽みたいに赤くなっていた


228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:45:33.71 ID:b60TOGzsO

畜生ォ…甘いぜェ…


229:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/17(水) 23:56:32.68 ID:MW9QgjQOO

それからちょうど一ヶ月後

「大河!いそげ!遅刻しちまうぞ!」

「朝からぎゃあぎゃあうっさいわね!アンタが早く起こしてくれないのが悪いんでしょ」

「何様だよ!もういい置いてくからな!」

「ちょ、ちょっと待って!どうあっ」

ズダン!と、豪快に蹴つまずいた大河に手を貸して引きずる様に起き上がらせる

いつもの待ち合わせ場所には、いつも通りの光景が待っていた

「みーのりーん!ってみのりん!?」

「ちょ、櫛枝!?」

「おっそいよ大河!高須くん!ああコレ?一限目体育だからさー待ちくたびれすぎてもうここで着替えちまったぜよ!」

「「ええ~っ!!?」」

「ほらほら無駄口はここまでだ!一限の彼方へさあ行こう~!」

背中にターボでも着いているのだろうか上下ジャージフル装備の実乃梨は軽やかな足取りで大河と竜児を置き去りにする

その実乃梨のジャージ、お尻の部分には
ツギハギで出来た太陽が眩しげに輝いている

おしまい


241:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/02/18(木) 02:10:17.53 ID:ImhA9WU10

みのりんかわいい



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